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55 現れた人

last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-15 22:02:13

 重い鍵盤の音に混じり、部屋時折ガラス窓が割れる音がこの部屋に響いてくる。

私は黙ってピアノを引き続けた。脳裏によぎるのはこの城で大好きな父と母と幸せに暮らした懐かしい日々。親切な使用人たちに囲まれ、伯爵令嬢として何不自由なく、永遠にこの幸せが続くのだと信じて止まなかったあの頃はもう二度と帰ってくることはない。

お父様……お母様……こんなことになってごめんなさい。この城を守ることが出来ませんでした。大勢の人を殺戮し、この手を血で汚してしまいました。

私は死んでもお2人の元に逝くことは出来ないでしょう。

恐らく私が死んだ後、この魂は地獄に落ちてしまうでしょう。

親不孝な娘をお許しください……。

その時――

「……ネ様ー!」

何処かで誰かが私の名を叫んでいる気がした。でもきっと気の所為に決まっている。それとも地獄からの死者が私を呼んでいるのだろうか……?

「……ネ様ー! フィーネ様! 何処ですか!?

「え?」

はっきり私の名を呼ぶ声が聞こえ、ピアノを弾く手を止めた。

あの声は……? まさか……そんなはずは……。

その時――

「フィーネ様! お願いです! 返事をして下さい!」

「そ、そんな馬鹿な……」

その声は私が逃したはずのユリアンの声だった。まさか……こんな燃え盛る炎の中、私を探しに戻ってきたのだろうか?

「フィーネ様ー !う!」

ユリアンの苦しげな声が聞こえた。

「ユリアン!?」

席から立ち上がると、広間の扉が勢いよく開かれた。

「フィーネ様!」

「ユ、ユリアン……?」

広間に飛び込んできたユリアンの身体は金色の光に包まれていた。

「フィーネ様……!」

ユリアンは駆け寄ってくると、無言で私を強く抱きしめてきた。

「良かった……。まだ……無事で……本当に……」

ユリアンは泣いているのだろうか? 肩を震わせ、私のことを力強く抱きしめてくる。

「ユリアン……な、何故ここに……? それにその光る身体は……?」

するとユリアンはますます私を強く抱きしめてきた。

「そんな話はこの城を出た後にいくらでも聞きます……。早く一緒に逃げましょう!」

「駄目よ! 行ける訳無いでしょう!? 私はこの城と一緒に死ぬのだから!」

「そんなの駄目です!」

ユリアンは叫んだ。

「ユ、ユリアン……」

するとユリアンは私から少しだけ身体を離し、両頬に触れた。

「死んでは駄目です! 貴女は死んではいけ
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    「や、やめろっ! 頼む……っ! 許してくれーっ!! ギャーッ!! あ、あっちへ行ってくれ! フィーネッ!! 助けてくれっ!!」「こ、この……魔女め……っ!! グアアアアアアーッ! よ、よせーっ!! やめろっ! 俺を……喰うなーっ!!」狼の下敷きにされた2人の痛みと苦しみ……そして恐怖の絶叫は止むことはない。2人とも私の魔力で心臓が無事な限り、死ぬことは無い。なので未だに意識を失うことも無く、泣き叫び続けている。「フフフ……まだまだ叫ぶ元気がありそうですね。心臓が止まる最後の時まで苦しみ抜いて死んで下さい」「痛い痛い痛いっ!! ギャーッ!!」「た、頼むっ!! いっそ……いっそ殺してくれーっ!」叔父とジークハルトの絶叫が響き渡る。断末魔の叫びを上げ続けていた2人はやがて声を発する事も出来なくなった。恐らく発声器官を喰い破られたのだろう。今や狼の牙を立てる音や咀嚼音……血をすする音しか聞こえなくなった。叔父とジークハルトの耳には私の声は届かないだろうが……今も狼に喰われ続けている2人に私は語った。「あなた方の死を見届けた後……私はこの城を燃やし、無に返します。私の名はFine(フィーネ)。全てを終わらす者……。アドラー家はこれでもう終わりです」やがて全てを喰らいつくしたのだろう。2匹の狼達が私の方を振り向き、ゆっくりと近づいてくると足元にひれ伏した。「どう? お前たち……。飢えはもう満たされたかしら?」私は2匹の狼達の背中を撫でると、彼等は嬉しそうに尻尾を振る。「さて、叔父様とジークハルト様はどうなったかしら……」血まみれの床に転がる骸骨を確認する為に私は近付き……笑みを浮かべてジークハルトと叔父の骸骨を見下ろした。するとそこにはまだドクドクと脈打つ2つの心臓が血溜まりの床の上に落ちていた。彼等は心臓だけになってもまだ生きていたのだ。「フフフ……上出来よ。よくやったわ」私は2匹の狼達を見て笑みを浮かべた。「叔父様、ジークハルト様……最期は私の手で貴方達の息の根を止めてあげますね?」そして指先から燃え盛る火の玉を作り出した。「炎よ……この醜い欲にまみれた彼等を燃やし尽くし……全てを無に返しなさい」そして迷うこと無く、未だにうごめく2人の心臓目掛けて火の玉をげつけた。ボッ!!あっという間に燃え盛る炎に包まれる2つの心臓。そしてそ

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